今は昔、いふかひなきをとこなむありける。よろづにをかしう愛づれば、なでふなさけなどあらむぞ、さこそうちつけなれはやと人のなむ言ひける。さるにこのをとこ、 あだなをば如何がはせむと我がまひのまひにあらぬも好き好きしかれ これぞいにしへ心あるべきと人のまたの言ふなりけり。さて年もふれば、のちの人の名もえ知らざりけるに、ただをとこの名をばかの歌のまひのまひをのみ抜きてぞ付きける。 (出典『丸々物語』・作者未詳・詠み人知らず)